悪魔祈祷書

…僧侶が聖書の中で基督に成り代って云うのです。「吾は悪魔の救世主なり。皆吾に従え」ってんで自分が先祖代々から受け伝えて来た悪魔の血すじを、系図みたいに書並べたのがソノ新約の書出しなんでありとあらゆる科学的な悪事のやり方が、自分の体験と一緒に、それ相当の悪魔式のお説教を添えて書いてあります。

悪魔紳士録 其の弐『倍音の如き咆哮「アノテーションズ・オブ・ア・オートプシー」』

【今回の御題曲】
スラッジ・ブラック・メタル
アノテーションズ・オブ・アン・オートプシー」
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「ヒューマン・ダスト」
http://www.youtube.com/watch?v=xejbVgsOqU0:movie


「我を過ぐれば憂ひの都あり、
我を過ぐれば永遠の苦患あり、
我を過ぐれば滅亡の民あり
義は尊きわが造り主を動かし、
聖なる威力、比類なき智慧、
第一の愛、我を造れり
永遠の物のほか物として我よりさきに
造られしはなし、しかしてわれ永遠に立つ、
汝等こゝに入るもの一切の望みを棄てよ」
(ダンテ・アリギエーリ 叙事詩『神曲』地獄篇第3歌)


「三界の狂人は狂せることを知らず 四生の盲者は盲なることを識らず
生まれ生まれ生まれ生まれて生のはじめに暗く
死に死に死に死んで死の終わりに冥し(くらし)」
(空海上人(弘法大師)「秘蔵空論」)


「悠々たる哉天壤、
遼々たる哉古今、
五尺の小躯を以て此大をはからむとす、
ホレーショの哲學竟(つい)に何等のオーソリチィーを價するものぞ、
萬有の眞相は唯だ一言にして悉す、曰く『不可解』。
我この恨を懐いて煩悶、終に死を決するに至る。
既に巌頭に立つに及んで、
胸中何等の不安あるなし。
始めて知る、
大なる悲觀は大なる樂觀に一致するを。」
(藤村操 「遺書『巌頭之感』」)


「胎児よ胎児よ何故躍る
母親の 心がわかっておそろしいのか」
夢野久作ドグラ・マグラ」巻頭歌)


「見よ、蒼ざめ足る馬在り、
此れに乘る者の名を死と謂ひ、
陰府(よみ)、此れに隨ふ」
(ヨハネ黙示録第6章第8節)


『骸骨美形の形をして活躍するといふ怪』
「慶運法師骸骨の絵賛に、
かへし見よおのが心はなに物ぞ色を
見声をきくにつけても」
鳥山石燕「今昔画図続百鬼 骸骨」)


機関銃よりも悲しげに、
繋留気球よりも 憂鬱に、炸裂弾よりも残忍に、
毒瓦斯よりも沈痛に、曳火弾よりも蒼白く、
大砲よりも ロマンチツクに、煙幕よりも寂しげに、
銃火の白く閃めくような詩が書きたい!
(萩原朔太郎 「戦場での幻想」)



デス声とは、不可思議な物で在る。

デス界隈迄堕ちぬ人には
何の為に彼んな獣の咆哮に似た雄叫びを
生者が挙げねば為らぬのか、

皆目見当も付くまい。

グロウル。
スカム。
カテドラル。

もう、名称を聴くだに、響き然え、酷い。

だが、彼等に一理御座るとすれば、
其れは、「死」を表現し続けて居る

只唯一の音楽と謂う事で、

「藝術」に対する反抗としては、
もう、本当に「最終」だのだ。

最終だのに終わらぬ。
死!死!死!

終わり無き世の目出度さよ。
とは謂うが、

終わり亡き世に哭き喚くのが
人間では無いのか。

死滅せり然る後、
誰しも口無しにて。

臓腑を抉られる如き
空間を歪ませる如き

蜚蠊が殺到する様な殺伐とした戦慄に

只只、「怖ろしさ」を体験する。

其れ、以上でも、
其れ、以下でも無い。

魔人の咆哮が大道芸の域に達する時
人は
哲学を視るの乎。
哀し味を噛み締めるの乎。
可笑し味を覚えるの乎。

閑話休題。

竟にデス声は、蒙古民族のホーミー
詰まり、「倍音」の如き呻きに達した。

高尚でも何でも無い。
只只、笑うしか無い。

遣か然むる、其れは当然の理だのだ。
何も無い彼等には、笑える程、何も無い。
真理と謂えば此れ程明白な真理も無い。

「真実怖い時、諦めた時、
人は、笑うしか無い」

肉体の抜け殻を脱ぎ棄てし亡者には
最早、「笑い」しか遺されては居らぬ。

笑い踊る骸骨。
古来、万国共通の思想。

彼の「本邦最古のオフ・ビート・ロード・ノベル」
東海道中膝栗毛」を顕わした

十返舎一九」は己が死に際しては、
「棺桶に花火を飾って欲しい」
と云ったとか云わぬとか。

綺麗は汚い。
汚いは綺麗。
闇と汚れの中を飛ぼう。

踊れ!笑え!亡者共!
其れが、遍くが露顕す、
人魂谺すロケンロー也!

「ひとくいしゅうちょうが おおだいこ
つきよにこっそり たたいたら
はくぶつかんの きょうりゅうが
いっしょにうかれて おどったぜ
ホネホネロック (ホネホネロック)
ホネホネロック (ホネホネロック)
ホネホネ ホネロック

タイマツつもって ガイコツも
ちょうつがいはずし おどったぜ
ろじうらの ゴミばこじゃ
イワシのあたまも おどったぜ
ホネホネロック (ホネホネロック)
ホネホネロック (ホネホネロック)
ホネホネ ホネロック

さばくじゃしんだ ライオンも
たてがみだして おどったぜ
ムカデやヘビの なきがらも
たいこにあわせて おどったぜ
ホネホネロック (ホネホネロック)
ホネホネロック (ホネホネロック)
ホネホネ ホネロック

ホネホネロック (ホネホネロック)
ホネホネロック (ホネホネロック)
ホネホネ ホネロック」

悪魔紳士録 其の壱 『静か為るデス・メタル 「シニック」』

【今回の御題曲】
プログレッシブ・デス・メタル
「シニック」

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「エヴォリューショナリー・スリーパー」
http://www.youtube.com/watch?v=_fhVLykF3nU:movie


迦葉当知 如来亦復如是 出現於世 如大雲起 
以大音声 普遍世界 天人阿修羅 如彼大雲 
遍覆三千大千国土

迦葉当に知るべし、如来も亦復是の如し。
世に出現すること大雲の起るが如く、
大音声を以て普く世界の天・人・阿修羅に遍ぜること、
彼の大雲の遍く三千大千国土に覆うが如し。

於大衆中 而唱是言 我是如来 応供 正遍知 明行足 善逝 世間解 
無上士 調御丈夫 天人師 仏 世尊 未度者令度 未解者令解 
未安者令安 未涅槃者令得涅槃 今世後世 如実知之 我是一切知者 
一切見者 知道者 開道者 設道者 汝等天人 阿修羅衆 皆応到此 
為聴法故

大衆の中に於て是の言を唱う、我は是れ如来・応供・正遍知・明行足・善逝・
世間解・無上士・調御丈夫・天人師・仏・世尊なり。
未だ度せざる者は度せしめ、未だ解せざる者は解せしめ、
未だ安せざる者は安せしめ、未だ涅槃せざる者は涅槃を得せしむ。
今世後世、実の如く之を知る。
我は是れ一切知者・一切見者・知道者・開道者・設道者なり。
汝等天・人・阿修羅衆、皆此に到るべし、法を聴かんが為の故に。 

迦葉当知 譬如大雲 起於世間 遍覆一切
慧雲含潤 電光晃曜 雷声遠震 令衆悦豫
日光掩蔽 地上清涼 靉靆垂布 如可承攬

迦葉当に知るべし
譬えば大雲の世間に起って遍く一切を覆うに
慧雲潤を含み電光晃り曜き
雷声遠く震いて衆をして悦豫せしめ
日光掩い蔽して地の上清涼に
靉靆垂布して承攬すべきが如し

(妙法蓮華経薬草喩品)


彼のクトゥルー神話に曰く
這い寄る混沌・ニャルラトホテプは

「敗北を悔しがりつつ、敗北を娯しみ、更に悔しがる己を嘲笑う」

大凡の門外漢の紋切り型に基づかぬ
十重二十重の絶え間無い「皮肉屋」
無謀を超えた無貌。

其れこそがデスの極意で在る。

余りに静謐で稠密。波羅蜜・ミーツ・デス。
蓋し、デスでは無いと人は云うだろう。
だが、

百凡、人智を超えた神変の天辺
風雲怒涛、驚天動地、天変地異、天地開闢の涯ては善悪の彼岸。
最后の取り付く島に蹙が御座る事を。

余慶を余計とし、余殃に酔い痴れる。
人生で勝とうと謂う下等な思惑をも超越する。
幽邃に逍遥する濫觴。

汝、感傷に浸る莫れ。
鳴かれる雉も撃たれ揺蕩う泡沫に歌語。